lvls_i’s blog

あなたの為に死ねるならそれ以上の幸せはないよ

宇宙人たち

月もない新月の夜。 都会の煌々とした街灯だけがベッドの上のふたつの裸体を照らしていた。 裸体、といってもそこには色香を伴うようなめくるめく官能の世界がある訳ではない。むしろ、わざとらしい嬌声を上げているだけで終わるものであった方がどれほど良…

星の輪郭をなぞる

「何読んでるの?」 伸びた前髪の隙間から覗く瞳が文字を追う。 本を読んでいる時の彼はそばに居るのに少し遠くてそれが少し悲しかった。 実際、本や映画を見て様々な生き様を見ている時の彼はまるで空から人々を覗く人ではない何かのような、この世界の本当…

ミッドナイトに逃亡

全てが眠る午前3時。 浮き足立つ心を押し留めて密かに家を抜け出した。 ぬるい風が頬を撫でていくのにも構わずに走り出す。 いつもはうるさく吠える犬が寝ている横を抜けて行けば街灯に薄く照らされる白い背中。 「おっせーぞ!」 優斗くんの笑顔がチカチカ…

イカロスの翼

綺麗な人だ。 魂までが清らかな、愛と自由の間から産まれたひと。 あの綺麗な人のそばにいたい。 あの人のそばにいるために私も、まっさらでいたいと思った。 寝ぼけた体をストレッチで起こして浮腫みを取る。 ベースメイクはいつもより少し軽めにして睫毛を…

夢の向こうに愛を見る

「 」 呼ばれていた、 朝でも夜でもない午前3時。 瞬きと共に落ちた雫、それが歩いた頬を拭う。 何も思い出せないけれど心まで溶けてしまうような優しい夢だった。 ベットから抜け出して洗った顔。 ただこの浮遊する気持ちを落ち着けたくて髪を纏めるのも忘…

狐の嫁入り

華やかな会場に広がる笑い声。 視線の先には純白のドレスを身に纏う、君。 華やかなものより実用的で簡素なものを好んだ君に似つかわしくない様に思える豪奢なドレス。 俺と別れてから趣味が変わったのかな それともそれは君の隣にいる彼の趣味? 俺の知る君…

ポラリス

堤防の上を舞うスカートとそれを追う、俺。 繋いだ手は緩く離さない為だけの力で。 「ちょ、危ねぇって」 いつだって好奇心のままに動く彼女に幾度となく言い放った言葉を投げる。 ポーズだけの言葉を受けて淡い笑い声が上がる。 神様がいるのなら今この瞬間…

水葬

夜の校舎に忍び込むことは思ってた以上に簡単だった。 部活中に見つけたフェンスの穴。 顔も知らないいつかの貴方もここを通って何かを成したのだろうか。 辿り着いたプールサイド。 履き潰したローファーと穴の空いた靴下を脱ぐ。 ひたひたぴちゃり。 所々…